線形写像と線形性について解説

前回は写像の基礎について解説しました。

今回はいよいよ線形写像について解説していきます。

10分あればすべて読めると思います。

この記事の著者

マス夫 @masuo_blog

現役東北大学院生。院試免除、早期卒業で大学院進学。

大学の数学と物理をわかりやすく解説しています。

目次

線形写像とは?

早速ですが、線形写像の定義は以下のようになります。

線形写像

$n$項数ベクトル空間$\boldsymbol{R}^n$から$m$項数ベクトル空間$\boldsymbol{R}^m$への写像

\begin{eqnarray} f:\boldsymbol{R}^n \longrightarrow \boldsymbol{R}^m \end{eqnarray}

が線形写像であるとは、$\boldsymbol{R}^n$の任意のベクトル$\boldsymbol{a}$,$\boldsymbol{b}$と任意のスカラー$k$に対して、

\begin{eqnarray} &(1)& f(\boldsymbol{a}+\boldsymbol{b})=f(\boldsymbol{a}) + f(\boldsymbol{b}) \\[5pt] &(2)& f(k\boldsymbol{a})=kf(\boldsymbol{a}) \end{eqnarray}

が成り立つときにいう。

写像の前後でベクトルの和とスカラー倍の演算を保っていることが分かります。

この2つの性質併せ持つ性質を線形性と呼び、この性質を満たす写像を線形写像といいます。

線形写像の例

線形写像の例について解説していきます。

関数$y=ax$、$y=ax+b \ (b\neq0)$、$y=ax^2 \ (a\neq0)$による写像について見ていきましょう。

$y=ax$について

任意の実数$x_1, x_2, k$に対して、$y=f(x)=ax$とすると、

\begin{eqnarray} &(1)& f(x_1 + x_2)=a(x_1 + x_2)=ax_1 + ax_2 = f(x_1)+f(x_2) \\[10pt] &(2)& f(kx_1)=a(kx_1)=k(ax_1)=kf(x_1) \end{eqnarray}

となり、$(1),(2)$が成り立つので$y=ax$は線形写像であることが分かります。

$y=ax+b \ (b\neq0)$について

任意の実数$x_1, x_2, k$に対して、$y=g(x)=ax+b \ (b\neq0)$とすると、

\begin{eqnarray} &(1)& g(x_1 + x_2)=a(x_1 + x_2) + b \neq (ax_1 +b)+(ax_2 +b)= g(x_1)+g(x_2) \\[10pt] &(2)& g(kx_1)=k(ax_1) +b \neq k(ax_1 +b)=kg(x_1) \end{eqnarray}

となり、$(1),(2)$が成り立たず、$y=ax+b \ (b\neq0)$は線形写像ではないことが分かります。

$y=ax^2 (a\neq0)$について

任意の実数$x_1, x_2, k$に対して、$y=h(x)=ax^2 \ (a\neq0)$とすると、

\begin{eqnarray} &(1)& h(x_1 + x_2)=a(x_1 + x_2)^2 \neq ax_{1}^2 + ax_{2}^2= h(x_1)+h(x_2) \\[10pt] &(2)& h(kx_1)=a(kx_1)^2 \neq k(ax_{1}^2)=kh(x_1) \end{eqnarray}

となり、$(1),(2)$が成り立たず、$y=ax^2 \ (a\neq0)$は線形写像ではないことが分かります。

さて、3つの例から分かるように線形性とはまるで原点を通る直線のような性質であると言うことが出来ます。

線形写像の合成

2つの線形写像の合成もまた線形写像となります。

線形写像の合成

2つの線形写像$f:\boldsymbol{R}^n \longrightarrow \boldsymbol{R}^m$、$g:\boldsymbol{R}^m \longrightarrow \boldsymbol{R}^l$を考える。この2つの線形写像の合成写像$g\circ f:\boldsymbol{R}^n \longrightarrow \boldsymbol{R}^l$もまた線形写像となる。

証明は以下に示します。

線形写像の合成の証明

$\boldsymbol{R}^n$の任意のベクトル$\boldsymbol{a}$、$\boldsymbol{b}$と任意のスカラー$k$に対して、

\begin{eqnarray} &(1)& g\circ f(\boldsymbol{a} + \boldsymbol{b})=g(f(\boldsymbol{a} + \boldsymbol{b}))=g(f(\boldsymbol{a})+f(\boldsymbol{b}))=g(f(\boldsymbol{a}))+g(f(\boldsymbol{b}))=g\circ f(\boldsymbol{a})+g\circ f(\boldsymbol{b}) \\[10pt] &(2)& g\circ f(k\boldsymbol{a})=g(f(k\boldsymbol{a}))=g(kf(\boldsymbol{a}))=kg(f(\boldsymbol{a}))=kg\circ f(\boldsymbol{a}) \end{eqnarray}

以上より、$(1)$、$(2)$が成り立つので合成写像$g\circ f$は線形写像である。

まとめ

今回は線形写像と線形性について解説しました。

特に、線形性については線形代数以外の分野でも必要になる概念なので理解しておきましょう。

次回は線形写像の行列表現について解説していきます。

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